岩屋物語(維摩と金子みすゞ) 2019年9月8日ー
奥坂穴観音石室の石に線刻された「維摩居士」に出会ってから、「維摩経」の虜になりました。
さらに、「維摩経」について知りたくて、数冊の書籍を読んでみました。
残念ながら、用語や理念が難しくて、全く刃が立ちません。
(最後に、参考文献を補記しています。)
そんな中、NHKのシブ五時(澀護寺)に出演の「釈徹宗」氏の最新作「なりきる すてる ととのえる」(PHP文庫:Kinndle版)に出会うことができました。著者が「超訳」という本質を解りやすく解説されています。その中に一人の詩人の詩が紹介されていました。その内容に、今まで全く解らなかったことに、「そういゆことか」と、これが本当に腑に落ちることかと思えるほど納得したのです。
その一節を是非とも知っていただきたくてここに紹介したいと思います。
釈徹宗氏の書籍の一部を紹介しますと、
第六章「不思議の章」の”菩薩の歩む道”の記述です。
『「この世俗から離れていながら、決して離れない。それが菩薩の道です」と説いています。この維摩の教えを聞いて、文殊菩薩についてきた数多くの神や人が、仏道を極める心を固めた、と経典では述べられています。
』
これに続いて、金子みすゞの詩が述べられています。
『
蓮と鳥 金子みすゞ
泥の中から
蓮が咲く
それをするのは
蓮じゃない。
卵の中から
鶏が出る
それをするのは
鶏じゃない
それに私は
気がついた
それも私の
せいじゃない。
』
さらに、続けて、
『
・・この詩、大乗仏教の立脚点が表現されていると思います。・・・・・
・・・世俗を這いずり回っている中で、”気付かされる”。苦悩によって喜びが成立する。
そう語りかけているのではないでしょうか。
』
さらに、金子みすゞの詩を読んでみると、
『
私と小鳥と鈴と
私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが、
飛べる小鳥は私のように、
地面(じべた)を速くは走れない。
私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のように
たくさんの唄は知らないよ。
鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。
』
まだまだ紹介したいのですが著作権に関わりますので、その他の詩は、是非ともご購入して購読されることをお薦めします。金子みすゞの生涯も胸に詰まるものがあります。
維摩経について
ここでは私がようやく理解できたと思われることについて、ごくごくさわりのみ、簡単に紹介してみます。今後も継続的に学んでいきたいと思っています。
1.大乗仏教の有名な経典で1999年大正大学がチベットでサンスクリット語の原典を発見しています。
2.1,2世紀頃インドで成立し、中国の鳩摩羅什訳『維摩詰所説経』が日本に初期大乗経典として伝えられました。
3.聖徳太子が維摩経義疏を著し、法隆寺五重塔の東面の塑像(維摩詰と文樹菩薩の問答風景)があります
4.維摩詰(維摩)は維摩居士とも、古代インド毘舎離城(ヴァイシャーリー)の富豪で、釈迦の在家弟子となったという。
5.足守藩木下㒶定の「桑華蒙求」では、浄名居士として紹介されている。
6.奥坂穴観音の石室左側手前の石に維摩居士、文殊菩薩、毘沙門天の線刻像があります。
参考文献
・なりきるすてるととのえる 釈徹宗 PHP文庫(Kindle版)
・金子みすゞ名詩集 金子みすゞ 彩図社
・「維摩経」を読む 長尾雅人 岩波セミナーブックス19
・維摩経をよむ 菅沼晃 NHKライブラリー
・改版 維摩経 長尾雅人訳注 中央文庫
・維摩経講話 鎌田茂雄 講談社学術文庫
2019年9月8日